琥珀の夏
著:辻村深月
文春文庫
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【小説】琥珀の夏 著:辻村深月 レビュー
※ネタバレをかなり含んでいます。
琥珀の夏 購入のきっかけ
本屋さんをフラフラしていたら・・・
見つけました!
辻村深月 最新の文庫本!
「琥珀の夏」!!
テンション爆上がりでした笑
文庫で1,000円を越えるのは高いなぁ・・・と思ったのですが、辻村深月の小説はハズレがないと知っているので、その場で購入!
あらすじなど何も知らず、ただ作家さんの名前だけで購入しました。
早速カフェに入って読み始めました♪
傲慢と善良 感想・レビュー(ネタバレ込み)
第一章
園児のミカの目線で描かれていくストーリー
<ミライの学校>での暮らし。
幼いのに両親と離れての暮らし。
同じような子供たちもたくさんいる。
「泉に大切なものを流したら願いが叶う」
それを知ったミカは、夜中に水彩絵の具を流す。
ミカのお願い事が「両親と一緒に暮らせるように」だった。
これにはドキッとしました。
当たり前のように両親とそこで暮らしていたから疑問には思いませんでしたが、やっぱり幼い子は両親と一緒に暮らしたいんだなって・・・
ミカは熱を出して倒れ、泉に絵の具を混ぜたことが先生に知られてしまう。
「泉に大切なものを流したら願いが叶う」ということが先生たちに知られて、学び舎のみんなが集められて、怒られてしまう。
ミカはみんなから外されて、泣きながら先生に謝りに行く。
ミカの幼心で、絶対に心細いはずなのに謝りに行くのは偉いなと思いました。
先生たちは誰もミカを責めたりしていなかったのに、進んで謝りに行くのは勇気がいることだと。
それをやるミカはとても偉いなぁと思いました。
第二章
小学四年生のノリコ。
クラスの人気者のユイちゃんに誘われて、夏の間の1週間だけ<ミライの学校>に行く。
ノリコは頭はいいけれど、クラスでは不人気の女の子。
クラスでもあまり馴染めていない。
この章でいいなと思ったのは、ノリコのお母さん。
看護師をやっていて忙しく、夏の間の学び舎には、本人が決めていいと言ったこと。
親が勝手に決めるのではなく、子供に選択させるっていいなって思いました。
ノリコは学び舎でもあまり馴染めない。
その時に、同い年のミカと出会う。
第三章
弁護士になり、結婚し子供もいる大人になった法子(ノリコ)。
子供の保育園が決まらないことで頭を抱える日々。
テレビニュースで<ミライの学校>の跡地から女児の白骨遺体が発見されたと。
法子はここにいたと夫に話すが、「外では話さない方がいい」と言われる。
法子の努める弁護士事務所に、<ミライの学校>跡地で見つかった白骨遺体が孫じゃないかと疑う夫妻が訪れる。
調べてくれないかと。
法子は、その白骨遺体がミカじゃないかと疑っていた。
第四章
小学四年生のノリコが主役の話。
時間軸が戻ります。
ミカはノリコに臆さずに話しかけてきて、ノリコも友達になります。
<ミライの学校>の先生たちは誰かのお父さんやお母さんで、ノリコの班の先生はさちこ先生とけん先生。
ノリコの心情がリアルで、どこか心が痛くなります。
だけど読んだら止まりません笑
さちこ先生とけん先生の仲が悪くなります。
大人なのに。先生なのに。
そんな中、ノリコは初潮を迎えます。
頼れるはずの大人の女性のさちこ先生は姿を現さず、ノリコはお風呂に行けないでいると、ミカが現れて助けてくれます。
<ミライの学校>での生活が続いていき、1週間が経ち、日常に戻ります。
第五章
法子のお話。
依頼を受けた夫妻と謎に迫っていく。
かつてけん先生だった人の元へ会いにいく。
なんか・・・けん先生胡散臭いなって・・・
第六章
夫妻の孫を、<ミライの学校>が探して連絡をとってくれた。
法子の受けた依頼は完了となる。
生きていてくれてよかった。
複雑な事情が絡んでいたんだなと思いました。
法子とやりとりをしていた<ミライの学校>の田中がミカだと知る。
そして、発見された女子遺体が誰のものなのか、突然判明する。
ここに来て急展開だなと。
でも真実が明らかになる時はこう突然なのかもしれないなって。
第七章
法子の弁護士としてのお話。
ミカの弁護を引き受けてほしいと依頼を持ち込まれる話。
身元が判明した女児遺体の母親が、<ミライの学校>と田中ミカを訴えた。
田中ミカを弁護士してほしいと依頼される。
ミカが殺人を犯したと断定されたわけじゃない。そうだったとしても当時11歳で責任能力はない。
それでも裁判を起こしてきた母親は、「ずっと子供を放置していたくせに」と世間では叩かれている。
考えさせられることが多いなぁと思いました。
何十年も子供を放置していながら、死んでいたとわかったなら裁判をしてお金を取ろうとするのは何だかなぁと思う。
<ミライの学校>は、どうして遺体を埋めたのか、隠蔽したのか。
謎が多いなぁって。
一言で言ってしまえば、『<ミライの学校>はカルトだから』で済んでしまうのかもしれない。
でもそのカルトに子供を預けておいて、ずっと放置していた母親の責任の方が重いのではないかと思う。
第八章
法子が、葛藤しながら、結局田中ミカの弁護を引き受けるお話。
かつて<ミライの学校>へノリコを誘ったユイちゃんから突然の電話。
「弁護を引き受けないで」
ユイちゃんの被害妄想めいた想像力がすごかった。
親と絶縁していると・・・
細かい人生は不明だけど、宗教二世のような被害があったのかもしれない。
法子の子供の保育園が決まってホッとする。
弁護を受けるのかマスコミから連絡があった。
田中ミカの弁護を引き受けることになったら迷惑をかけるかもと夫に言う。
法子の周りには、理解のある人が多くて安心します。
難しい依頼を受けることになるかもしれないけれど、頑張れる環境にあるのはとてもいい。
法子は田中ミカの弁護を引き受けます。
最終章
田中ミカの視点の話。
ミカと法子の対峙。
法子の推理と、ミカの知る真実。
子供たちだけで暮らした、子供たちが自治をしていた間に起こった事件。
ミカの回想。真実。
何が起こったのか、明らかになる回。
考えさせられることが、本当に多いなぁって。
大人たちの責任は大きい。
だけどミカはひとりで抱え込んで、重圧だったろうに。
真実が明らかになってよかった。
エピローグ
裁判の話。
ミカの訴えが認められ、裁判に勝つ話。
難しいことはわかりません。
でも、最後にホッとできてよかった。
<ミライの学校>はカルトなのかもしれない。
だけどそれぞれの考え方があって、理想や現実があって、カルトを信じる親と、その親を信じる子供。
親を信じる子供が成長して大人になった時、親に対してどう思うか。
一言じゃ言えなくて。
ハッピーエンドで終わってよかった。
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