傲慢と善良
著:辻村深月
朝日文庫
【小説】傲慢と善良 著:辻村深月 レビュー
傲慢と善良 購入のきっかけ
わたしは辻村深月のファンです。
辻村深月のほとんどの物語を読んだし、これからも読んでいくと思います。
しかし、文庫の発売日がいつかなどの情報は持っていません。
どこかで探せば見つかるのかもしれませんが、そこまでしていません。
たまたま本屋に行った時に
辻村深月の文庫が出てる!!
という大発見の感覚が大好きで、突然舞い込んでくる楽しいことです。
そして財布の中身を気にせずに即購入します。
今回の「傲慢と善良」もたまたま立ち寄った本屋さんで大発見して即購入しました。
傲慢と善良 感想・レビュー(ネタバレ込み)
★架編
結婚を前に婚約者がいなくなった。
その婚約者はストーカーに遭っていたという。
婚約者の実家や彼女が利用していた結婚相談所に足を運び、犯人と婚約者を探し出そうとする。
架が婚約者として魅力を感じていなかった真実(まみ)を、東京と群馬(真実の故郷)を往復しながら探しにいく姿に驚いた。
そもそもそんなに魅力を感じていなかったのなら、どこかで決別してそれぞれ違う道に行けばよかったのにと思う。
ずるずると付き合った挙句に魅力のない人と結婚して、何が幸せなのだろう?
そして、そんな婚約者がいなくなって、必死に探しにいく姿は、もう一度言うけれど驚いた。
たいして好きでもない相手に、そこまでできるだろうか?
細い糸をたどって、真実が少しでも関わりを持った人物や、ストーカー疑いのある人物に迷いなく会っていく。
手がかりはなく、真実が見つからず、そうしているうちに架の女友達から呼び出される。
真実がいなくなった原因は、架の女友達にあった。
架の女友達は真実が許せず、真実は架にとっての妥協の結婚相手だと、言っては行けないことを言っていた。
そしてストーカーは真実が架と結婚したいために吐いた嘘だったことを、女友達はあっさり見抜いていた。
架がもし自分の女友達をとって真実を捨てたとしたら、失望していた。
だけど架は真実を選んだ。
そこがとてもよかった。
人の幸せを素直に喜ばない架の女友達の方がどうかと思っていたから、もし女友達の方を選んでいたとしたら、そこで読むのをやめていたと思う。
★真実編
真実編に移ってからは一気に読んでしまった。
女性の一人称の方が読みやすくて感情移入もしやすかった。
架の女友達に余計なことを言われてから、真実は失踪した。
現実逃避というか、ここじゃないどこかへ行きたくなる気持ちは何となくわかる。
ボランティアという名目で、住み込みの場所を見つけた。
そこにいる人たちは優しかった。
真実にとっては全くあたらしい世界で、徐々に馴染んでいった。
今までは親の望むような人生を歩んできたけど、自分で選んで、決めて、真実はだんだん自立しているような、成長している気がした。
そのまま、真実はきちんと自立をして、あたらしい世界で生きていくんだと思った。
そうしてほしいと思った。
東京や群馬に戻れば、真実を思い通りにしようとする親や、真実の存在を嫌う架の女友達がいて、真実はきっと生きづらいと思う。
架も真実のことをきっと大切にはしない。
だから、あたらしい世界で、自立して生きていけばいいと思った。
幸いにも真実が失踪した先では、真実の存在は暖かく受け入れられている。
結婚が全てではないし、真実はあたらしい世界で自立して生きていけばいいし、架はまたいいと思える人に出会えばいい。
架が真実を迎えにきた。
真実は終わらせようとしていた。
だけど、架は真実との結婚を望んだ。
架は結婚願望もほとんどなかったし、真実のこともそこまで強く好きだと言うわけでもないと思っていたから、結婚を望んだことにとても驚いた。
真実がそれに応じたことにも驚いた。
真実はもう終わる決意を固めていたと思ったから。
わたしが架に魅力を感じていなかったからかもしれない。
真実は新しい場所に行ったことで成長した。
架はどうだろう?
成長したのかは分からないけど、女友達より真実を選んだことだけは評価したい。
辻村深月作品はハッピーエンドが多いけれど、もしも架と真実が別々の道を選んでいたとしてもハッピーエンドになったと思う。
二人とも30代と言うことを考えると、結婚を考えるのならば遅いのかもしれない。
だけど結婚だけが人生ではないし、結婚を選ばなくても幸せな人や魅力的な人もたくさんいる。
ふたりはお互いのためにも結婚しなくてもよかったんじゃないかなぁと思った。